経験の「森」で迷子になったら:あなたの「核となる強み」を見つけ直す問いかけ
経験の「森」に立つあなたへ:多すぎる経験が、かえって強みを見えなくする?
キャリアを10年以上積み重ね、多くの経験をされてきたことと思います。様々なプロジェクトに携わり、多様なスキルを習得し、多くの課題を乗り越えてこられたことでしょう。その経験は、あなたの確かな財産です。
しかし、経験を豊富に積むほど、「何でもそこそこできる」ようになった一方で、「これだけは誰にも負けない」「自分にしかない突出した強み」が見えにくくなったと感じることはないでしょうか。まるで、多くの木々が生い茂る「経験の森」の奥深くに立ち、どこに進めば良いのか、自分にとって最も価値のある木はどれなのかが分からなくなってしまったような感覚かもしれません。
この「核となる強み」が見えにくい状態は、キャリアの次の方向性を定める上で迷いを生じさせたり、漠然とした不安につながったりすることがあります。管理職に進むべきか、専門性を深めるべきか、あるいは全く新しい分野に挑戦するべきか。その選択肢を前にしたとき、自分の揺るぎない強みが何か分からないと、自信を持って一歩を踏み出すのが難しくなるのです。
なぜ、経験が豊富なほど「核となる強み」が見えにくくなるのか
長年の経験の中で培われたスキルや知識は、あなたにとってあまりに当たり前になりすぎて、その価値や独自性に気づきにくくなります。無意識のうちにこなせるようになったことは、「強み」として認識されにくくなるのです。また、様々な役割をこなせるようになることで、特定の分野に「専門家」として深く根差すのではなく、「何でも屋」のように器用に立ち回る場面が増え、結果として「これが自分の専門だ」と言える分野が曖昧になることもあります。
このような状況から抜け出し、多大な経験の中に埋もれた「核となる強み」を再び見つけ出すためには、意図的に立ち止まり、自己を深く見つめ直すプロセスが必要です。ここで有効なのが、「問いかけ」を通じた内省です。
問いかけは、経験を客観的に棚卸しし、当たり前の中に隠れた価値やパターン、そして他者からは高く評価されているが自分では気づいていない才能を発見するための強力なツールとなります。
経験の「森」を切り拓く、あなたの「核となる強み」を見つけ出す問いかけ
ここでは、あなたの豊富な経験の中から「核となる強み」を抽出するための具体的な問いかけをいくつかご紹介します。これらの問いかけに対して、一つずつ丁寧に向き合い、心に浮かんだこと、経験に基づいた具体的なエピソードを書き出してみてください。
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問いかけ1:これまでのキャリアの中で、「最も少ない労力で、最大の成果を上げられた」と感じる経験はどのようなものでしょうか?
- この問いかけは、あなたが自然に得意とし、力を発揮できる領域を示唆します。苦労や努力と感じにくいのに、なぜか良い結果が出せた経験の中に、あなたの根源的な強みが隠れている可能性があります。その経験を支えていたスキルや思考法は何だったのか、具体的に掘り下げてみましょう。
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問いかけ2:同僚や部下、あるいは顧客から「〇〇さんといえば、これがすごいよね」「このことなら〇〇さんに相談したい」と言われたことはありますか?それはどのようなことですか?
- 他者からの評価は、自分では気づきにくい「無自覚な強み」を知るための重要なヒントです。繰り返し評価される点、頼りにされる点は、あなたの客観的な価値であり、差別化された強みである可能性が高いです。具体的なエピソードを思い出し、どのような状況で、どのように評価されたのかを振り返ってみましょう。
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問いかけ3:過去のプロジェクトや業務で、「困難だったが、やり遂げた後に大きな達成感や学びを得られた」経験は何ですか?その成功や克服において、あなたが果たした独自の役割や貢献は何でしたか?
- 困難な状況を乗り越える中で発揮される力は、あなたの強靭さや問題解決能力、粘り強さといった「核」に近い部分を示します。成功そのものだけでなく、そこに至るプロセスであなたがどのように考え、行動し、どのような壁を乗り越えたのかを詳細に振り返ることで、あなたの独自のスタイルや貢献の質が見えてきます。
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問いかけ4:仕事以外の場面(趣味、ボランティア活動、家庭など)で、「人に教えたり、助けたり、自然とリーダーシップを発揮したりしていること」は何ですか?それは仕事とどう繋がる可能性がありますか?
- 仕事から一度離れると、肩書きや役割に縛られず、より自然な形で発揮されるあなたの才能や情熱が見えてくることがあります。仕事外での経験は、普遍的な人間力やコミュニケーション能力、特定のスキルなど、キャリアにも応用可能な「核」となる強みを示唆していることがあります。意外な繋がりが見つかるかもしれません。
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問いかけ5:仮に、今の会社や業界を離れても、どんなスキルや経験があれば、新しい場所でゼロからでも価値を発揮できると感じますか?それはなぜですか?
- これは、あなたの強みの中で、特定の組織や業界に依存しない、より普遍的で応用性の高い部分を炙り出す問いかけです。環境が変わっても通用する自信があるスキルや経験は、まさにあなたの「核」となる部分であり、今後のキャリアチェンジや新しい挑戦における強力な武器となります。
問いかけから得られた気づきを「核となる強み」として整理する
これらの問いかけへの回答を書き出したら、次はそれらを整理し、あなたの「核となる強み」として言語化する作業です。
- 共通項を見つける: 書き出したエピソードや気づきの中で、繰り返し現れるテーマやパターンはありませんか?複数の問いかけで示唆された点は、あなたの強力な強みである可能性が高いです。
- 具体的な言葉にする: 抽象的な表現ではなく、「どのような状況で」「何をすることで」「どのような成果や影響を与えられる」といった具体的な言葉で強みを表現してみましょう。例えば、「コミュニケーション能力が高い」ではなく、「異なる意見を持つチームメンバー間の橋渡しをし、合意形成を円滑に進めることができる」のように具体化します。
- 「できること」「得意なこと」「好きなこと」と結びつける: 問いかけで見えてきた強みが、「努力すればできること」なのか、「自然と無理なくできてしまう得意なこと」なのか、あるいは「やっていて楽しい、情熱を感じること」なのかを考えてみましょう。特に「得意なこと」や「好きなこと」と重なる強みは、持続的に力を発揮しやすい「核」となり得ます。
見つけ出した「核となる強み」を未来のキャリアに活かす
あなたの「核となる強み」が明確になったら、それを今後のキャリアにどう活かすかを考えましょう。
- 現在の仕事での活用: 今の業務の中で、どのようにその強みを意識的に発揮できるか、より貢献できる役割はないかを考えてみましょう。同じ仕事でも、強みを活かす意識を持つだけで、モチベーションや成果が変わってくることがあります。
- 強みをさらに磨く: 見つかった強みをさらに強化するために、どのような学びや経験が必要かを見極めましょう。関連する研修を受けたり、意図的にその強みを活かせるプロジェクトに参加したりすることが考えられます。
- 新しいキャリアへの一歩: もし現在の環境で強みを活かしきれていないと感じるなら、その強みをより必要としている部署への異動、あるいは業界や職種を変えて挑戦する転職も選択肢に入ってきます。明確になった「核となる強み」は、新しい環境で自分を売り込む際の強力なアピールポイントとなります。副業やNPO活動など、仕事以外の活動で強みを試してみることも有効です。
まとめ:経験は宝。問いかけで輝きを再発見する
長年にわたる経験は、あなたのキャリアにとってかけがえのない財産です。しかし、その多さゆえに、あなたの「核となる強み」が経験の「森」の中に埋もれて見えにくくなることもあります。
今回ご紹介した問いかけは、その森に光を当て、あなたの独自の価値や揺るぎない強みを見つけ出すための羅針盤となるでしょう。問いかけを通じて自己と深く向き合うことで、あなたが本当に得意とし、情熱を傾けられ、そして市場や組織から必要とされる「核」が明確になります。
見つけ出した「核となる強み」は、キャリアの迷いを晴らし、自信を持って次のステージへ進むための確固たる土台となります。ぜひ、これらの問いかけを実践し、あなたの経験という宝物の中から、最も輝く「核」を見つけ出してください。そして、その強みを活かして、あなたらしいキャリアをさらに豊かに築いていく一歩を踏み出していただければ幸いです。